魚を発酵させた調味料“魚醤”をご存じですか?
2015/05/17
読んで字のごとく“魚の醤油”
“魚醤(ぎょしょう)”とは、大雑把に分かりやすく言えば「魚でつくった醤油」みたいな食品です。
つまり、一般的な醤油は大豆と小麦を発酵させて作りますが、魚醤は魚を発酵させて作ります。
その昔、食品を塩と麹で発酵させたものを“醤(ひしお)”と呼んでいました。
元々は、食材を長期保存する目的で塩漬けにしたものが始まりのようです。
醤の歴史は、紀元前8世紀頃の古代中国にまで遡ると言われます。
米や麦、大豆など穀類から作った醤は、当初は“穀醤(こくびしお)”と呼ばれていました。
けれども実は、穀醤よりも魚醤のほうが古く、醤の発祥は魚醤(うおびしお)や肉醤(ししびしお)といった、動物性の食品を塩と麹に漬け込んだところから来ています。
その後、魚醤は塩辛、肉醤は熟れ鮨(なれずし)など、調味料以外の食品としても発展しました。
※熟れ鮨(なれずし)…魚類を塩と米に長期間漬け込んで乳酸発酵させた食品。
現在の酢飯を用いる寿司と異なり、乳酸菌によって酸味を生じる、本来の“鮨(すし)”と呼べるもの。
ちなみに、野菜や果物を発酵させて作った“草醤(くさびしお)”というものもかつては存在し、これは現在の漬け物の原形となりました。
魚醤のおいしさの理由
魚醤は、魚の内臓や筋肉に含まれる酵素で動物性たんぱく質が分解されることによってできます。
分解されたたんぱく質は、グルタミン酸などのアミノ酸やペプチドといった成分になります。
グルタミン酸はご存じの通り、昆布だしなどにも含まれる旨味のもとですね。
日本の「3大魚醤」
・ハタハタやいわしを原料とする、秋田県の“しょっつる(塩汁)”
・イカの内臓やいわしを原料とする、石川県の“いしる(魚汁)”
・いかなご(こうなご)を原料とする、香川県の“いかなご醤油”
この3つが、日本の3大魚醤と呼ばれます。
日本では、安価な大豆栽培が広まったこともあり、時代の変遷につれて穀醤のほうがより一般に普及し、現代では醤油や味噌が主要な調味料となっています。
けれども東南アジアでは、今でも魚醤が最も多く使われているようです。
日常的におかずの味付けに使うのであれば、植物性の醤油や味噌のほうがヘルシーだとは思いますが、時にはより旨味の濃厚な魚醤を使って調理してみてもいいかもしれませんね。