不飽和脂肪酸(リノール酸)の過剰摂取はアレルギーや生活習慣病の原因に。
2018/10/20
「植物性脂肪のほうが動物性脂肪よりも体にいい」
これは本当でしょうか?
また、動物性脂肪には“飽和脂肪酸”、植物性脂肪には“不飽和脂肪酸”が多く含まれていることから、飽和脂肪酸よりも不飽和脂肪酸のほうがあたかもヘルシーであるかのようなイメージをお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
ところが不飽和脂肪酸もまた、過剰に摂りすぎるとガン・動脈硬化・心疾患・高血圧などの生活習慣病、そしてアレルギーといった、現代人を苦しめるさまざまな現代病を引き起こすことが分かってきました。
特に私たちの一般的な食生活では、リノール酸≒オメガ6を摂りすぎる傾向にあります。
一方、「本当にヘルシーな脂肪酸」と近ごろ注目を集めている“オメガ3”は、どうしても摂取不足気味です。
この記事では、
- かつてはヘルシーと言われた植物性脂肪の摂りすぎが、なぜ生活習慣病のリスクを高めるの?
- どうして現代の日本人は、リノール酸などオメガ6を摂りすぎて、逆にオメガ3が不足してしまう傾向にあるの?
- 私たちの健康を守るために、オメガ3とオメガ6はなぜ一定の摂取比を守る必要があるの?
以上のような素朴な疑問について、分かりやすくご説明していきたいと思います。
もくじ
なぜリノール酸(オメガ6)を摂りすぎると、生活習慣病のリスクを高めてしまうの?
リノール酸は、サラダ油をはじめ紅花油・ごま油など、私たちが家庭で使う身近な植物油に多く含まれているオメガ6脂肪酸です。
このリノール酸ですが、体内で“アラキドン酸”と呼ばれるオメガ6につくりかえられ、さらにこのアラキドン酸からは、体内に異常が発生した際に“プロスタグランジン”や“ロイトコリエン”と呼ばれる生理活性物質が生成されます。
これらは、ヒトの身体のあらゆる部位で「炎症反応」を促進する成分です。
以下「リノール酸の摂りすぎがなぜ生活習慣病のリスクを高めるの?」この答えをよりよく理解していただくため、まずこの“炎症”について少し詳しくお話ししたいと思います。
炎症…赤く腫れたり痛んだりするけど、体の中では具体的に何が起きてる?
炎症とは、外部からウィルスや化学物質が侵入したとき、あるいはそれらの作用や外傷によって細胞や組織に障害がもたらされたときに、侵入物と戦ってこれを無害化したり、障害を受けた個所を修復するために起こる大切な生体防御反応です。
すなわち、毛細血管が拡張や透過して免疫細胞が広範囲に活動できるようにする、リンパ球やマクロファージが血管の内外を遊走して異物や病原体を捕食・殺菌・消化する、線維芽細胞が傷ついた部位の細胞を増殖させたり新たな血管をつくる…といった一連の治癒のプロセスが「炎症」と呼ばれるものです。
ケガや感染など何らかの異常でダメージを受けた私たちの身体は、この炎症反応が順調に進むことで、やがて回復して正常な生体機能を取り戻し、再び以前の健康な生活を送れるようになります。
炎症が行き過ぎるとどうなる? 炎症の“副作用”とは?
しかしこの「炎症」には、副作用的な側面 も強くあります。
例えば、マクロファージなどの免疫細胞が病原体や異物を殺菌・無害化する際には、活性酸素や酸化酵素がつくられてこれが使用されます。
こうして相手の細胞を酸化して殺してしまうことができるのですが、これを捕食・消化して最後に死んでしまうマクロファージの球体から余った活性酸素や酸化酵素が漏れ出て、私たちの身体の細胞にも悪い影響を与えます。
また、血管に炎症が起こった場合には、上記のような免疫細胞による異物の駆逐や除去が行われた後で、血管壁を構成する平滑筋細胞の増殖が促され、傷ついた血管壁の再構築が始まります。
しかしこのとき増殖されるのは、以前のようなしなやかな収縮性を持つ平滑筋細胞ではなく、遊走性・増殖性が強く、免疫細胞と同じように血管内の異物を捕食する力のある炎症型の細胞です。
そして増殖しすぎて盛り上がった末、自らも異物を飲み込んで死んだ細胞群の上に、さらにマクロファージの死骸が泡沫化してこびりつき、血管内部は肥厚化して狭くなり、血管そのものは柔軟性を失って硬くなってしまいます。
これが、生活習慣病として極めて悪名高い「動脈硬化」の始まりですね。
このように“炎症反応の行き過ぎ”は、血管を狭く硬くもろくしてしまうばかりではなく、血管以外の組織の細胞にも活性酸素による悪影響を与え、正常な細胞の仕組みを少しずつ破壊していくことで私たちの身体にさまざまな障害や病気をもたらす可能性が明らかになっています。
リノール酸の摂りすぎ → 過剰な炎症反応 → 生活習慣病のリスク増大
リノール酸の話に戻りますが、リノール酸の摂りすぎにより体内にアラキドン酸が細胞膜の脂質成分として増えすぎると、身体に異常が発生したときに炎症性の生理活性物質“プロスタグランジン”や“ロイトコリエン”も非常に多く生成されることになります。
すると、前の項目で説明したような炎症反応も必要以上に亢進し、免疫活動のためにつくられる活性酸素や酸化酵素も過剰に生まれて私たち自身の血管や細胞まで傷つけてしまいます。
活性酸素は、血管内のLDLコレステロールを酸化して「酸化LDL (超悪玉コレステロール)」にしてしまい、これがまた炎症反応を呼び起こしてマクロファージに貪食され、さらに動脈硬化を増やしてしまいます。
また、血管に炎症が多発すると、インスリン抵抗性も強くなって高血糖の原因となります。
さらに、活性酸素は細胞の遺伝子を変異させ、ガンの元となるリスクを高めることもよく知られています。
このように、動脈硬化を起点とする心疾患や脳卒中をはじめ、高血圧、糖尿病、アレルギー、自己免疫疾患であるリウマチなど、ありとあらゆる現代病が、食生活の偏りや運動不足、ストレスや化学物質など現代の生活習慣に端を発する“過剰な炎症反応”という現象に深く関わっていることが明らかになっています。
すなわち「リノール酸から生まれるアラキドン酸が増えすぎて、体内の炎症反応が必要以上に亢進してしまう」これが、リノール酸の過剰摂取が生活習慣病のリスクを高める大きな理由です。
リノール酸(オメガ6)の過剰摂取を防ぐ最も効果的な方法とは?
一体どんな食品から、リノール酸をたくさん摂りすぎてしまうの?
私たち現代人がリノール酸を摂りすぎてしまう一番の原因は、植物油の摂りすぎにあります。
すなわち一般家庭でも普通に使われる、大豆油、ひまわり油、紅花油、コーン油、ごま油などは、リノール酸の含有量が高いです。
「サラダ油」と呼ばれるものは、主に大豆油と菜種油からつくられるので、やはりリノール酸が多く含まれています。
また「キャノーラ油」は要するに菜種油ですが、リノール酸は全体の20%程度であり、他の植物油に比べれば少ないほうだと言えます。
しかしそれでも、油断して毎日これで揚げ物などつくって食べていると、やはりリノール酸をたくさん体に取り入れてしまいます。
リノール酸の過剰摂取を防ぐには? とにかく○○を極力食べないようにするしかない!
私たちがこれら植物油の摂取を減らすためには、とにかく脂っこい食べ物を避けるしかありません。
家庭では揚げ物やフライパン調理を避け、なるべく煮物や和え物など油を使わなくて済む献立にしましょう。
外食をすればファミレスも居酒屋も、どうしても肉料理やフライ、天ぷらなど油を多く使うメニューがたくさん並んでいて、私たちもついついそのようなものを注文してしまいがちです。
付き合いもありますから、外食をゼロにすることは無理かもしれません。
それでも必要以上の外食はしない。油の摂取を避けるためには、まずこれに尽きます。
もちろんコンビニ弁当やスーパーのお総菜にも、安価な植物油がたくさん使われています。
ファストフード・ジャンクフードは言うに及ばずです。これらも極力控えましょう。
「世界で一番ヘルシーな食生活」は、リノール酸(オメガ6)を摂りすぎないためにも最も効果的。
現代の洋風化・簡便化した食生活が、肉や乳製品に多い飽和脂肪酸とともに、植物油によるリノール酸(オメガ6)の過剰摂取を招き、不要な炎症の多発により生活習慣病やアレルギーのリスクを大きくしています。
まずはこれまでの食習慣を見直して、ご飯に味噌汁、魚料理、野菜の煮物や和え物など一汁三菜の食事を心がけることから始めましょう。
世界文化遺産にも指定され、その確かなヘルシーさが海外からも熱い視線を集めている「和食」ですが、まず私たち日本人が昔ながらの家庭料理を自ら進んで見直すこと。
これが、リノール酸の過剰摂取を防ぎ生活習慣病を予防して健康に長生きできる、最も効果的で確実な方法だと言えます。
リノール酸は、炎症反応を制御するのに欠かせない大切な脂肪酸であり、しかもヒトの体内では合成することができないため、必ず一定量を食事から摂るべき「必須脂肪酸」とされています。あくまでも“摂りすぎるのは禁物”という意味です。
植物油に多いことからも分かるように、植物系の食品にリノール酸は含まれますので、和食中心のメニューで豆類・穀類・種子類・野菜などをたくさん食べていれば、リノール酸の不足によって健康を損ねることはありません。
また、次に述べますように、オメガ6の摂取量についてはむしろ“オメガ3”との摂取バランス が重要になってきます。
決して忘れてはいけない~炎症を抑える油「オメガ3」の重要さ
近年になり「本当に身体にいい油」として“オメガ3”の名は耳にされたことがあるでしょう。
なぜオメガ3が「身体にいい」と言われるのでしょうか?
それは、これまで見てきたように私たちが過剰摂取しがちなリノール酸≒オメガ6に対して、オメガ3は拮抗的・補助的に働く作用があり、アラキドン酸によって亢進しがちな炎症反応を抑制する力に優れているからです。
α-リノレン酸、DHA、EPAなどが「オメガ3」の代表的な脂肪酸です。
このうちDHA、EPAは魚油に多く含まれているため、魚を主菜とする一汁三菜の和食メニューは、オメガ6の過剰摂取を防ぐとともにオメガ3を適度に摂取できる、本当にヘルシーな食事と言えるのです。
オメガ3の具体的な効果やオメガ6との理想的な摂取比など、詳しくは下記の別記事にまとめていますので、興味のある方はご覧ください。
オメガ3脂肪酸とは何?オメガ6との比率で健康と美肌効果が倍増!
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸、果たして本当にヘルシーなのはどっち?
脂質の摂りすぎは誰もが気になるところ。
しかも近年、一口に“脂質”といってもいろんな種類があることが分かり、一体どんな脂肪酸が体によいのか・悪いのか? 本当に迷ってしまうことと思います。
このブログでは、脂肪酸についての知識をより深め、それぞれのメリットorデメリットや食事への上手な取り入れ方を理解していただくために、飽和脂肪酸や不飽和脂肪酸について誰にも分かりやすい詳しい記事をご用意しました。
以下の別記事もぜひご覧になってみてください。
なぜ世界中で不飽和脂肪酸の摂りすぎに!?心疾患の敵は肉の脂だけじゃない。
不飽和脂肪酸(オメガ6)の摂りすぎで酸化!過酸化脂質は肌荒れの元。
不飽和脂肪酸がトランス脂肪酸に変貌…マーガリン・植物油・パン・お菓子に注意。