健康な食事について考えるブログ

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もうお肉は一切食べられない…?「加工肉は発がん物質」WHOの本意

      2015/12/30

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「加工肉と赤肉は大腸がんの原因になる」

このような IARC の報告を受け、世界中のメディアや食品業界、消費者が大騒ぎとなりました。
IARC=国際がん研究機関は、WHO (世界保健機関) 傘下の独立した外部組織です。

※ 加工肉 (ウィンナー・ハム・ベーコン等) や赤肉 (牛肉・豚肉) の摂取は、多くなればなるほど確実に大腸がん胃がんのリスクを高めます。
肉を食べることによる大腸がんと胃がんの発症メカニズムについては、↓↓↓以下の記事をご覧ください。
大腸がんも胃がんも予防可能!原因は食事。ガンの仕組みを分かりやすく説明します

特にウィンナソーセージやハム、フランクフルトといった馴染みの深い加工肉が、煙草やアスベストと同じくらい確実な「発がん物質」であるとの正式な指定を受けたのには、驚いた方が多かったようです。

「じゃあ、今後は一切ウィンナーやお肉を食べちゃいけないの?」

消費者が心配する一方で、各国の研究機関や業界団体からは

「何でもかんでも発がん物質にするな」
「1つの食品を槍玉に挙げて食生活を云々するのは間違い」
「IARCはデータを都合良くねじ曲げている」

…など、非難や反発の声が相次いでいます。
一体、誰が正しいんでしょうか??  (@_@;) ウーン

前回の記事では、IARC報告の具体的な内容や、IARCが定める5段階の発がんリスク評価について詳しく述べました。

そこで今日は、

・今回の報告によって、IARCやWHOが本当に訴えたいことは何か?

これについて、個人的に思うところもあるので、少し長くなりますがよくよく考えた上で述べてみようと思います。

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WHOは「バランスの取れた食生活を」しかしその本意は…?

WHOは決して「加工肉と赤肉を食べるのを一切やめろ」とは言っていません。

IARCの報告を受けてWHOが主張しているのは

「加工肉や赤肉の摂取を現状よりも減らしていくことで、大腸がんのリスクを減らすことができる (いや、ぜひ減らしてほしい)」

ということです。

WHOの見解について ―― 通り一遍の解釈では?

IARCの発表後、WHOは「加工肉と大腸がんの関係」と題する声明を発表しています。

日本の食品安全委員会のホームページにこの概要が記載されていますので、それをここに引用します。

加工肉と大腸がんに関する国際がん研究機関(IARC)報告書の発表以来、不安を訴え説明を求める問い合わせを、WHOは多数受領した。 

(中略)

 IARCの今回の調査結果は、発がんリスクを抑えるため保存肉はほどほどに摂取するよう提言した、WHOの2002年報告書「食事・栄養と慢性病予防」を追認する内容となっている。

 これは加工肉の摂取をやめるよう勧めるものではなく、摂取量を減らせば大腸がんリスクを減らせることを示したものである。

 

WHOの2002年報告書「食事・栄養と慢性病予防」とは、2002年にWHOとFAO (国際連合食糧農業機関) が各国の専門家を集めて開催した合同会議の結果をまとめたレポートです。

肥満や糖尿病、がん、心血管疾患、歯科疾患(虫歯)など、現代特有の高カロリー・高脂質の食生活による慢性疾患について、食事や栄養面の影響について様々な科学的証拠を検証し、これらの疾患を予防するための勧告を行ったものです。

この報告を見ると、例えば「身体活動 (適度な運動)」「果物および野菜」の摂取が、比較的強い科学的証拠をもって発がんのリスクを下げると考えられていることが分かります。

逆に、「肥満」「アルコール」の摂取、そして「保存肉」や「塩漬け保存食」の摂取は、かなり強い証拠によって発がんリスクを上げるものとして分類されています。

詳しくは、下記リンク先の6ページをごらんください。
  糖尿病や心血管疾患など、他の疾病に関する分類表も載っています。
  http://www.caa.go.jp/foods/pdf/syokuhin267.pdf

このように、WHOや各国のがん研究機関により、高カロリー&高脂質の食べ物による発がんリスク、加工肉を含めた食肉による発がんリスクは、これまでに幾度も指摘&警告されています。

この流れは、かの有名な1977年の「マクガバン・レポート」にまでさかのぼるでしょう。

「マクガバン・レポート」について知りたい方は、ちょっと長いですが↓↓↓こちらをどうぞ。

1977年に、アメリカの上院議員であったジョージ・マクガバンが政府に提出した、「米国の食事目標」と題されるレポート。

当時のアメリカでは、心臓病やガンによる死亡率が非常に高く、国民医療費の急増で国の財政が破綻するとまで言われるほどだった。
この事態を受けて、上院議会に栄養問題特別委員会が設置され、マクガバン氏が委員長に就任、数千万ドルもの国費と7年の歳月をかけ、世界各国3000人以上の医学者や栄養学者などの専門家に協力を依頼し、大規模な調査と研究が行われた。
これらの結果をまとめた5000ページにも及ぶ膨大な報告書が「マクガバン・レポート」である。

これまで現代医学が見落としていた食の問題に焦点を当て、ファストフード、炭酸飲料、ステーキといった、それまでの典型的なアメリカの食事パターンを真っ向から否定、世界中の政府や医学界、食品業界などに大きな衝撃を与えた。
その内容の要点は…

●心臓病、ガン、脳梗塞など米国の重大死因となっている病気は、高カロリー・高脂質の間違った食生活による「食源病」である。先進国ほど、このような不自然なひどい食事をしている。
●現代医学はもっぱら手術や薬に頼っているが、これらの食源病はそのような方法では治せない。早急に食生活を見直し、新たな栄養学を取り入れた医療法に切り替えるべきである。

このように、当時としては画期的なものであった。

ところがこの報告は議論を巻き起こし、畜産業界や砂糖業界、製薬会社などから猛反発を受け、マクガバン氏はその後の議員選挙に落選、20年近くも不遇な歳月を送った。
しかし、どんな苦境にあっても良心を曲げない生き方は、次第に多くの人の共感と支持を得、1900年代末には国際食糧農業機関(FAO)のアメリカ大使に任命されるなど、再び世界の食糧援助の舞台で活躍した。

 

つまりWHOの主張は、

・IARCの発表も、現代の食生活についてこれまでWHOが勧告してきた内容の追認に過ぎない。
 (IARC自身も、今回の報告は「2002年のWHOによる勧告を補強するもの」だと述べています)

・即ち、肉や加工肉の発がんリスクを今になって突然言い出したわけではないし、ましてや食肉類を一切食べるな等とは一言も言っていない。

過去に繰り返し訴えてきたように、食肉類の摂取を減らして野菜や果物類を多く摂る、即ち本当にバランスの取れた食生活を心掛けることによって、世界の一人でも多くの人が発がんのリスクを下げることが望ましい。

どうやらそういうことのようです。

今回の報告の中で、IARCは「赤肉には栄養価もある」と認めた上で「今回の報告は、赤肉や加工肉を食べるリスクとベネフィットのバランスを取った食生活の指針を国民に示すため、各国の規制当局がリスク査定を行う上で重要なもの」と位置づけています。

つまり各国で政府がイニシアチブを取り、肉類の摂取を今より一層制限するよう国民に強く推奨すべく、その指針の強力な基準にしてほしいと。

確かに心疾患や糖尿病も恐いですが
「これを食べ過ぎるとガンになるよ!」
と言われれば、かなりインパクトありますからね (汗)

これまでも各国政府によって、カロリーや脂質を抑えた食生活は推奨されてきましたが、それは今言ったように、主に心臓病や糖尿病などガン以外の疾患リスクを踏まえたものでした。

また、これまで何度も勧告されてきたにもかかわらず、食肉の需要量は今でも年々増加しており、食肉産業は世界的に成長を続けている分野です。

そのような中で、今回ようやく、現代病の中でも最も恐れられている不治の病「ガン」と肉類の摂取を明確に関連づける発表が可能になったことで、増え続ける肉類の消費に各国政府がより強力な歯止めをかけてほしい。

WHOやIARCはそう願っているのだと思います。

では、WHOが本当に世界に訴えたいことは何か?

「個々人が加工肉の摂取で大腸がんにかかるリスクは未だに小さい。
 しかし肉の摂取量が増えるにつれて、がんになるリスクも高くなる」

という、IARCのクルト・シュトライフ博士の発言を前回の記事で紹介しました。

この日本語訳、実は私が不精をして、幾つかの日本メディアの報道から適当に切り貼りしたものでした(すみません…)。

今日、改めて IARCのプレスリリースの原文 を読んでみました。

上記のクルト・シュトライフ博士の発言は、英語の原文で次のようになっています。

“For an individual, the risk of developing colorectal cancer because of their consumption of processed meat remains small, but this risk increases with the amount of meat consumed,”

ここだけを見れば、日本国内メディアの一般的な報道、及びそこから切り貼りした私の“訳文”で問題ないように思えます↓↓↓

「個々人が加工肉の摂取で大腸がんにかかるリスクは未だに小さい。
 しかし肉の摂取量が増えるにつれて、がんになるリスクも高くなる」

確かにそのとおりです (^^;) 当たり前の内容ですし、訳もおおむね間違ってません。

ところが、博士の発言には実は続きがあるんです。
そしてこの続きの部分を、日本のメディアのほとんどが触れようとしていません。

なぜなら…この続きの部分によって、博士の発言全体の趣旨が大きく変わり、IARCが本当に訴えんとしている、食の経済化・グローバル化による影響の大きさ、それが全人類にもたらす健康被害の深刻さ、危機感といったものが、もろに一般国民に伝わってしまうからです。

そういうものは、どこの国でも幅を利かせる食品業界、あるいはメーカーをスポンサーに利益を得ているマスコミ業界、両方にとって決して報道したくない事柄ですね。

博士の発言の続きは、原文で以下の通りです。

“In view of the large number of people who consume processed meat, the global impact on cancer incidence is of public health importance.”

「(世界中で) 多くの人々が加工肉を消費していることを考えれば、その (加工肉摂取による) がん発症という世界的な影響は、公衆衛生上の重要な問題である」

この一言で、博士の発言全体の本当の意図が分かります。
すなわち前半の

「個々人が加工肉の摂取で大腸がんにかかるリスクは未だに小さい。
 しかし肉の摂取量が増えるにつれて、がんになるリスクも高くなる」

という部分は、

「個人が加工肉を食べてガンになる可能性は、確かに (煙草やアルコールに比べれば) 今は小さいかもしれないよ。
けれども、世界の加工肉の消費量は年々増えていて、それとともに人類の発がんのリスクも高まり続ける一方なんだ」

※煙草とアルコールは、加工肉と同じく「グループ1」に発がん物質として指定されている物質です。
IARCは、加工肉による世界のガン死亡者数が、煙草やアルコールによるガン死亡者数に比較して少ないこともデータとして述べています。
博士のこの「加工肉で発がんするリスクは小さい」という言葉は、これを踏まえた上であえて言われていると考えられます。

そして後半の

「(世界中で) 多くの人々が加工肉を消費していることを考えれば、その (加工肉摂取による) がん発症という世界的な影響は、公衆衛生上の重要な問題である」

という部分は、

「世界中で多くの人が、食肉業者の販売する加工肉を買って食べている。
その加工肉のために、実際に世界中でガンが多発しているんだ。
それを考えると、これは全人類的な公衆衛生として、決して放ってはおけない重大問題だと思うよ」

実際の博士の発言はもっとシンプルですから、これはあくまでも私個人の“意訳”と言ってしまえばそれまでです。
恐らく、食品・関係業界の反発、消費者の受けるショック等も配慮し、言葉を抑制しているのでしょう。

けれども、先ほど触れた2002年のWHOによるテクニカルレポート「食事・栄養と慢性病予防」においても、現代の資本主義経済の中で、食のマーケティング化、グローバル化が加速し、発展途上国の低所得者層にガン、心臓病、糖尿病などの「食源病」とも言える慢性疾患が増加していることに懸念が表明されています。

多くの新興国や発展途上国に対して、先進国が食肉の市場開拓を求め、抗生剤やホルモン剤でコストを抑えて効率的に生産された肉類を安価に輸出し、肉の味を覚えさせて需要を拡大し、利益を上げるためにますます増産すべく農家から大量の飼料を買い取る。

飼料用の農産物は、例えば農薬漬けでも遺伝子組み換えコーンでもよし、人間用の作物に比べて質を問われませんから、コストを抑えて大量生産でき、農家の収入も飛躍的に上がる。

となると、農家も人間用の作物の栽培をやめて、牛や豚の飼料用穀物ばかりを生産するようになり、人間を健康にするはずの野菜や果物の供給量はますます減っていく。

この手の先進国の食料戦略は、我が国にも覚えがありますね。
戦後の食糧難に、アメリカが大量に小麦や脱脂粉乳を供給してくれました。
そして、パンと脱脂粉乳(後には牛乳)を主体とした学校給食が始まり、おかずには肉類が出され、同時に「食生活近代化論」の名の元に「栄養改善普及運動」が政府の手で行われ、国民の肉食化が推し進められていったのです。

いわゆる「小麦戦略」と呼ばれるものです。

そしてそれと同時に、ガンや心臓病、脳梗塞などの血管疾患や糖尿病といった慢性疾患も急速に増大し、ついに我が国のガン死亡率は、かつてガン大国と言われたアメリカを追い抜いてしまいました。

もちろんアメリカは、戦後の飢えたかわいそうな日本の子供たちのために、大量の小麦をタダでくれたわけではありませんよ(笑)
国内の余剰小麦を処理するとともに、将来長きにわたって日本の食料をアメリカに依存させ、日本との外交を有利に運ぶとともに、日本から莫大な経済的利益を搾り出すためです。

このアメリカのもくろみは見事に成功し、戦後70年を迎えても未だに日本はアメリカに頭が上がりません。
我が国の食料自給率は、ご存じの通り悲惨なものです。

とにかく、現在でも続いているこのような食ビジネスの世界的な流れの中で、WHOのレポートでは次のような趣旨のことを訴えています。

●食の市場システムや個人の生活スタイルは、人間により健康的な利益をもたらすやり方で進化すべきである。

●そのためには、それを支えるための法的な規制や財政的な政策がぜひとも必要である。
 例えば、食物の価格を公的に制限し、良質で栄養価や安全性の高い食物を低所得者にも買いやすくする措置など。

●体を健康にする良質な食物を供給されることは、全人類の基本的な権利として認められる。

●現在、あまりにも高カロリー・高脂質で慢性疾患のリスクの高い食生活を変えるためには、現代の食ビジネスのあり方に対しても大いに意味するところがある。

●国際貿易問題は、輸出側の利益だけでなく、輸入側の経済力も配慮の上で、輸入国の消費者が自分の健康を考えて選択肢を持てるよう、多様な食物や製品を輸入できるように考慮すべきである。

●主要な国で畜産農家や酪農農家に助成金が認められているが、彼らは高品質のたんぱく質を人々に入手しやすくしてはくれたが、同時に慢性疾患リスクを増大させるような食生活のパターンをも多くの人たちに強化している。

マスコミはほとんど報道しませんが、世界最高の公的機関である国連配下のWHOがこのような勧告を行わねばならぬほど、事態は世界的に深刻であるということです。

人間にとって、体の滋養を得て命を繋いでいくための存在であった食物が、いつの間にか富をもたらす手段に変わり、しいては消費者=同じ人間自体をも、もはや金儲けの手段としか見なさなくなった
そういうことではないでしょうか。

そして、今回のIARCの発表も、明らかにこのWHOの勧告を踏まえています。

日本人は、肉を食べ続けてもよい? それともやめるべき?

海外、特に欧米は食肉の歴史が長く、たんぱく質やミネラル等の大事な栄養分をある程度は肉類から補給しなくてはならないもっともな理由があります。

ですからWHOも、世間や業界団体の反発は別にしても「肉を食べるのを一切やめろ!」とは言えない状況なのです。

なので「できるだけ今よりも摂取量を抑えて、バランスの取れた食生活をしましょう」と言うのが精一杯です。

ところで、私たち日本人はどうでしょうか?

先ほどアメリカの“小麦戦略”のところで触れたように、現在のような本格的な肉食が始まったのは、戦後、つまりたかだか50~60年前のこと。

日本には昔から優れた“魚食文化”があり、脂肪の種類から言っても肉類より良質な動物性たんぱく質を摂ってきました。

はっきり言えば、私たち日本人は、加工肉や赤肉の摂取をゼロにしても十分に健康に生きていける、そんなすごく幸せな民族なのです。

次回はこのような視点を踏まえ、

●IARCの発表に対し、日本人への影響について一般的に言われること
●今後、日本人が本当に目指していくべき食生活のあり方とは?

…について考えてみたいと思います。

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