【肉食=現代の食事がガンの原因となる理由②】肉を食べると免疫力低下するのはなぜ?
2018/05/04
食べるといかにも力が湧いてそうな赤肉。
実際、未だに「肉はスタミナ源になる」と信じ、特に暑い季節には“夏バテ防止”のために焼き肉やバーベキュー、野菜炒めなどの肉料理をする家庭も少なくないようです。
しかし実は、肉を食べるとスタミナがつくどころか、逆に体力が落ちていくことをご存じでしたか?
動物性たんぱく質や脂肪を摂りすぎると、消化器系にも過度の負担がかかり、体力を奪って活性酸素を大量発生させますが、それだけでなく、白血球の免疫力自体も下がるのです。
前回は、お肉中心で食物繊維の少ない食事によって、腸内に便が長時間溜まり、多くの有害物質が体を回って発がんリスクを高めるメカニズムを説明しました。
前回記事:【肉食=現代の食事がガンの原因となる理由①】食物繊維が少なく便が腸に居座る
今回は、肉類中心の食事によってコレステロールが増加し、結果として体の免疫力が低下する理由をお話ししたいと思います。
肉を食べ過ぎるあなたが体のあちこちで“がん”になるメカニズム
ウィンナーや赤肉の食べ過ぎがもたらすガンは、大腸がんや胃がんだけではありません。
全身のあらゆる器官で発がんのリスクを高めます。
悪玉コレステロールが増加…免疫細胞マクロファージが忙しすぎる。
肉類を多く食べると、中性脂肪やコレステロールが血液中に増加するのはご存じのことと思います。
特にコレステロールは、たんぱく質やリン脂質などとともに細胞膜を構成し、細胞内の独立を保ちながら必要な物質やエネルギーの出し入れを行うという大切な働きがあります。
ですので肝臓では、脂質・糖質・たんぱく質といった栄養素が食事から補給されると、常にせっせとコレステロールを合成し、身体中に送り出しています。
特に肉類に多く含まれる飽和脂肪酸は、このコレステロールや、いざというときのエネルギー源として体内に蓄積される中性脂肪に変換されやすく、あまり多く摂りすぎると血液がどろどろになるのはよく知られているところです。
さて、水に溶けない脂質を血液中に安定して存在させ、血流に乗せて全身に運ぶためには、たんぱく質と結合させる必要があります。
この、脂質とたんぱく質が結合したものを「リポタンパク」と呼びます。
中でもコレステロールを運ぶリポタンパクには「HDL」と「LDL」の2種類があります。
「LDL」は、肝臓から全身へコレステロールを送るリポタンパクであり、「HDL」は逆に、全身の余分なコレステロールを回収して肝臓へと戻すリポタンパクです。
※ 上図の下部、左側から順に、
・Cholesterol:コレステロール(遊離型)
・Triglyceride:中性脂肪
・Cholesterol ester:コレステロール(エステル型)
・Apoprotein:アポタンパク(脂質類とともにリポタンパクを構成するたんぱく質)
LDLが増えると身体中にコレステロールが拡散しますから、コレステロールが増えるもとと見なされ、LDLコレステロールはよく「悪玉コレステロール」等と呼ばれますが、各細胞で必要なコレステロールを送り届けるLDLもまた、身体の健康を維持するのに大切な働きをしているのであり、そのままでは決して「悪玉」なんかではありません。
問題は、このLDLが活性酸素によって酸化されたときです。
活性酸素が、まさに万病の元と言ってもよいほど体に悪いものであること、体の部位を問わずガンを引き起こす大きな要因となることはご存じだとと思います。
肉食はこの活性酸素を体内に増やしてしまいます。
詳しくは↓↓↓こちらの記事でまとめてあります。
<参考リンク>
さて、この活性酸素がLDLコレステロールを酸化するとどうなるかと言いますと、過酸化脂質に覆われた「酸化LDL」に変質します。
すると、体は酸化LDLを「異物」と認識するため、体内のマクロファージがこれを攻撃してしまうのです。
マクロファージとは白血球の一種で、異物や毒物、侵入してきた細菌や体内で変性した余分な物質、細胞の死骸などを捕食して一掃し、体内を正常できれいな状態に保つ免疫細胞です。
過酸化脂質は有害ですから、これに覆われた酸化LDLを捕食してしまうのは、間違いではありません。
けれどもその後、マクロファージ自身も力尽きて死んでしまいます。
そしてその残骸が血管壁に沈着して血管を狭くし、いずれは動脈硬化に進展して心筋梗塞や脳梗塞を起こしてしまいます。
それはそれで深刻な事態ですが、実はこのことは、ガンに関しても大きな問題となるのです。
マクロファージは、NK細胞など他の免疫細胞とともに、常日頃から血液に乗って体内を見回り、異物や病原菌、いわばガンの元となるようなものを捕食によって除去する役割を果たしているのです。
ところがこのように酸化LDLが増えると、これを処理するのにマクロファージが忙しくなり、他のガンの芽を摘む働きができなくなってしまいます。
そのため、酸化LDLの処理に追われているうちに、他の場所でガンの芽がどんどん伸びてきているかもしれないのです。
このように、肉食によってコレステロールが増えると、酸化LDLの数も増えることとなり、マクロファージの免疫能力が低下して発がんのリスクを高めることになるのです。
また、中性脂肪が増えるということは内臓脂肪も増えているということですが、この腹部の脂肪細胞が増えることで脂肪ホルモンの分泌に変化が起き、HDLコレステロールを減らしてしまうことが分かっています。
そして、体や血液中の余分なコレステロールが回収されず、LDLコレステロールが分解されて小さくなった「レムナント」という小型のリポタンパクが増え、コレステロールを含んだまま血管壁に沈着することになります(このレムナントは「超悪玉コレステロール」と呼ばれたりもします)。
このレムナントは、酸化されなくてもマクロファージの捕食対象となるため、酸化LDLの場合と同じく、動脈硬化の促進要因になるとともに、マクロファージを忙しくさせ、体の免疫機能を低下させてしまいます。
肉食によるコレステロールの増加が、動脈硬化による心疾患や脳卒中ばかりでなく、がんの危険をも高めてしまう理由がお分かりいただけたでしょうか?
次回は、
肉食がなぜ、発がんの大きな要因である「活性酸素」を増大させてしまうのか?
この理由についてまとめたいと思います。