大腸がんも胃がんも予防可能!原因は食事。ガンの仕組みを分かりやすく説明します
2015/12/30
10月末に、国際がん研究機関が「加工肉や赤肉が大腸がんの原因になる」と発表して世界中がざわついたことは、記憶に新しいと思います。
特に、加工肉は大腸がんと胃がん、赤肉は大腸がんの他、膵臓がんや前立腺がんの原因になるとされました。
けれども、なぜ加工肉や赤肉が大腸がんやその他のがんを引き起こすのか、その原因や仕組みが理解できないことには、「だから肉を食べるのを控えなさい」と言われても、なかなか実行は難しいですよね。
そこで今日は、主に肉食がダイレクトな原因とされている「大腸がん」、そして特に加工肉とも関連の深い「胃がん」を中心に、がんのメカニズムについて分かりやすくご説明したいと思います。
もくじ
あなたが大腸がんになる仕組み
…と思わずドキッとしてしまうような見出しかもしれませんが(笑)、
人が大腸がんになる仕組みは、次のように考えられています。
なぜ肉を食べると大腸がんになりやすいの? ①
① 動物性たんぱく質を大量に摂ると、たんぱく質が十分に消化・吸収されないまま大腸に至り、腸内の悪玉菌によってインドール・スカトール・アンモニア・フェノール化合物・アミン類などの有害物質に分解される(=腐敗)。
② また、この腐敗によって腸内環境が悪化し、ウェルシュ菌などの悪玉菌がさらに増える。
③ 特にアミン類は、腸内に分泌される亜硝酸と結合して、悪玉菌によって発がん物質 (イニシエーター) のニトロソアミンに変えられる。
④ 一方、動物性及び植物性脂肪をたくさん摂ると、脂肪を消化・吸収するため、肝臓より胆汁酸が腸内に分泌される。
⑤ この胆汁酸をウェルシュ菌が分解し、発がん促進物質(プロモーター)である二次胆汁酸に変える。
⑥ この刺激の強い二次胆汁酸が腸粘膜を傷つけ、そこに発がん物質であるニトロソアミンが作用すると、大腸がんが発生する。
つまり、加工肉や赤肉をたくさん食べると、動物性たんぱく質も脂肪もともにたくさん摂取してしまうことになり、ついでにウェルシュ菌を腸内にたくさん培養してしまうこととなり、上記のように大腸がんのリスクを格段に高めるわけですね。
なぜ肉を食べると大腸がんになりやすいの? ②
また、この他にも次のような要因も考えられています。
●特に肉類に多く含まれている必須アミノ酸の「トリプトファン」は、腸内でウェルシュ菌によってアミンの一種である「トリプタミン」に変えられる。
このトリプタミンもまた、発がん物質として作用する。
●焼いた肉や加工肉の添加物、また喫煙などにより体内に入ってくる発がん性化学物質は、肝臓に送られてグルクロン酸と結合され、水溶性の高い無害物質となって排出のために腸へ送られる。
ところが、腸内にウェルシュ菌が多いと、β-グルクロニターゼ (グルクロン酸結合を解除してしまう酵素) の活性が高くなり、せっかく無毒化されたグルクロン酸抱合物を加水分解し、元の脂溶性の有害物質に戻してしまう。
これらは腸肝循環(※)によって再び体内に吸収され、肝臓に戻ってしまう。
この循環をこれらの有害物質が繰り返しているうちに、腸粘膜に作用して発がんしてしまう。
※ 腸肝循環 脂肪を消化・吸収するために肝臓でつくられる胆汁酸を効率よくリサイクルするため、腸と肝臓の間を胆汁酸が一巡りするシステムのこと。 グルクロン酸と結合した有害物質は、そのままであれば便とともに排出されるが、ウェルシュ菌によって加水分解されると、再び胆汁酸とともに腸から吸収され、この腸肝循環のサイクルに乗ってしまう。 |
赤肉を始めとする肉食品が大腸がんのリスクを確実に高めるメカニズムが、お分かりいただけたでしょうか?
あなたが胃がんになる仕組み
「精製塩」の恐さ ― 塩化ナトリウムの純度が高すぎる
食事において、最も胃がんに関わりの深いものは「塩分」です。
特に、現代では加工食品にも外食で出される食品にも、塩っぱさの成分である“塩化ナトリウム”の純度を極限にまで高めた「精製塩」が使われること、そしてこの塩分の塩辛さをうまくごまかしてしまう「うまみ調味料(化学調味料=グルタミン酸ナトリウム)」が多用されることで、塩化ナトリウムの摂りすぎが起こり、胃がんや高血圧などさまざまな生活習慣病の深刻な原因となっています。
この点、未精製、つまり海水から水分を除去しただけの自然の塩は少し事情が違いまして、塩化ナトリウムだけでなく、カルシウム・カリウム・マグネシウムといった健康に欠かせないミネラルも含んでいるため、逆に不足すると体力を低下させると言われます。
ですから、せめて家庭で調理する際には「精製塩」でなく「粗塩(あらしお)」と表示された食塩を使用したいものです。
人が胃がんになるメカニズム
胃がんのメカニズムとしては、次のようなことが考えられています。
① 過剰の塩分(塩化ナトリウム)が胃の粘膜を溶かし、胃壁を傷つきやすくする。
② そこに、体内で生成されたニトロソアミンや、食品の添加物・残留農薬、喫煙などで外から入ってきた発がん性化学物質が作用すると、胃がんが発生する。
③ また、ピロリ菌に感染していると、胃の粘膜が薄くやせてしまい、胃炎や潰瘍を経て胃がんが起こりやすくなる。
ピロリ菌は胃がんの主要ファクター!必ず検査を受けましょう。
ピロリ菌は、胃がんとの深い関連性がはっきりと知られており、1994年、国際がん研究機関はピロリ菌を、煙草やアスベストと同じ「グループ1」すなわち明らかに発がん性のある物質であると認定しました。
また近年(2014年)には、全世界の胃がんの約8割がピロリ菌感染が原因であるとの報告書を発表しています。
我が国においても、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃炎などの患者を対象にした調査で、10年間で胃がんになった人の割合が、ピロリ菌に感染していない人ではなんと0%であったのに対し、ピロリ菌に感染している人では2.9%であったと報告されています。
胃がんを予防するには、塩辛い食べ物や濃厚な味付けのものを避けると同時に、ピロリ菌検査を受けておくことも欠かせないようですね。
塩分は控え目に―日本食よりも洋食のほうが要注意!
なお、食に関してよく誤解されているのが「日本食は漬物や味噌汁など塩分の高いものが多いからよくない」というものですが、現代では市販の漬物や味噌はほとんどが塩分控え目のものになっています (その代わりに化学調味料や添加物が多いのは困りものですが)。
全体的に見て塩分が高いのは、日本食よりもむしろ洋食なのです。
肉料理にたっぷりとかけられたソースやタレ、塩こしょう。
チーズやクリームをふんだんに使ったグラタンやシチュー、スープの類。
フライドポテト・チキンナゲット・ハンバーガーなどのファストフード。
これらの味を思い浮かべてみれば分かると思います。
肉類は、この欧米風の食事に欠かせない食材です。
しかも和食の魚と違い、骨もなく、脂肪も多く、濃いタレを付ければとても食べやすい。
ですので、一度に多くの量をペロリと平らげてしまうことになります。
肉を食べ続けるということは、大腸がんの原因となる動物性たんぱく質や脂肪を過剰摂取し続けるのみでなく、洋風の食事を通して過剰な塩分を摂り続けるということでもあります。
中でもウィンナーやベーコンなどの加工肉は、多くの加工食品の中でもとりわけ食塩量の多い食品です。
加工肉が、大腸がんとともに胃がんのリスクも高めると言われるゆえんです。
国際がん研究機関が、加工肉を発がん物質に指定し、赤肉を発がんリスクの高いグループに分類して、極力摂取を減らすように警告している理由がお分かりいただけたでしょうか?
次回は、肉類の摂取が大腸がんや胃がんばかりでなく、ガン全般や他のさまざまな生活習慣病を引き起こすメカニズムについても見ていきたいと思います。